複数の拠点をもつ企業や、テレワークを実施している企業にとって、社内の情報共有の効率化は重要な課題です。社内ポータルサイトがあれば、迅速な情報共有や業務効率化が期待できます。
しかし、実際に構築するにはどうすればよいのでしょうか。今回はWordPressで社内ポータルサイトを作るための方法や注意点を解説します。
社内ポータルサイトに必要な機能
社内向け・業務用ドキュメントの集約
社内ポータルサイトの機能の1つとして 、社内向けや複数の拠点で使用する業務用ドキュメントを集約し、一元管理する機能があります。この機能を利用すれば、同じ情報を社内全体で共有できます。
会社の規模が大きく複数の拠点それぞれで情報を持っている場合や、テレワークで社員がオフィス以外で仕事をしている場合では、情報共有が困難です。
社内ポータルサイトをうまく活用することで、会社全体に周知したい情報や、共有したいドキュメントを容易に展開できるようになります。
スケジュールの共有
社内ポータルサイトにスケジュールを登録・共有する機能を実装すると、全社員が他の社員のスケジュールを把握することができ、効率よくスケジュールを立てられるようになります。
休暇や出張、打ち合わせの予定以外にも、会社全体の行事などを登録しておけば、各自が状況を把握して業務のスケジュールを立てることが可能です。さらに個人ではなく会議室や貸与PCなども登録すれば、社内設備の利用のトラブルも避けられます。
ワークフロー
休暇や休日出勤などの勤怠関連、経費精算などの申請を行うワークフロー機能を実装すると大変便利です。それまで書類ベースで行っていた作業を効率的に処理できるだけでなくペーパーレス化を実現できます。
社内ポータルサイトで申請関連も一元管理することで、管理の効率化にも繋がります。
コミュニケーションツール
チャットやSNSの機能を社内ポータルサイトに実装すれば、社内全体で自由なコミュニケーションを実現できます。複数の拠点を持っている会社や、テレワークを行っている会社では、必須の機能とも言えるでしょう。
社員同士で円滑にコミュニケーションを取ることができれば、場所に関係なく業務を進めることができます。また、社内全体で協力体制が取りやすくなり、業務効率の向上 が期待できます。
社内システムとのリンク
すでに社内向けシステムが稼働している場合は、社内ポータルサイトに他のシステムのリンクをつけることで、簡単にアクセスができるようになります。
例えば、社内で ワークフローシステムや勤怠管理システム、ナレッジシステムなど多数のシステムが稼働している場合、サイトのURLをそれぞれ各自で管理していては大変です。
社内ポータルサイトに各システムへのリンクをつけておけば、社員は社内ポータルサイトのURLのみ把握していればよく、システム刷新などでURLが変わってもポータルサイト側のリンクのみ変更すればよいので、管理が楽になります。
社内ポータルサイトをWordPress で作成するメリット
無料で作れる
WordPressはWebサイトのコンテンツ管理ができるオープンソースソフトウェアです。オープンソースソフトウェアとは、プログラムのソースコードが公開されており、誰でも無償で自由に改変、再配布が可能なソフトウェアのことをいいます。そのため、WordPressは無料で使用できます。
WordPressは無償で使える上に簡単に利用でき、かつ多機能であるため、多くのWebサイト のコンテンツ管理で利用実績があります。社内ポータルを構築するなら、WordPressがおすすめです。
ただし、WordPressはあくまでソフトウェアです。WordPressを動かすためのサーバーやネットワーク、ドメインといったインフラについては、一定の費用がかかることに注意しましょう。
豊富なテーマを使用することでデザイン変更が簡単にできる
1からWebサイトを作成する場合は、まずデザインを考えなければなりません。デザインはサイトの使い勝手にも関わるため、きちんとした設計が必要です。
WordPressには、Webサイトの優れたデザインを簡単に実装できる「テーマ」が利用できます。テーマは豊富に用意されており、有料のものから無料のもの まであります。この中から好みのテーマを選べるだけでなく、変更も簡単にできます。
社内ポータルサイトにぴったりのテーマを「社内ポータルサイト向けのWordPressテーマ」で紹介していますので、そちらもご参考ください。
プログラミングスキルがなくても構築できる
「ポータルサイトを作成するのにプログラミングスキルが必要なのでは?」と思う人もいるでしょう。WordPressはコンテンツ管理システムであり、プログラミングスキルがなくとも項目を設定するだけで簡単に社内ポータルサイトが作成できます。
今まで社内ポータルサイトの作成・変更を専門の会社に発注している場合は、WordPressを導入して使いこなせるようになれば、発注費用を抑えられます。
プラグインで機能追加が可能
WordPressには、あとから機能を追加できる「プラグイン」が実装されています。プラグインも無料で利用でき、機能を追加することでサイトの作成を効率よく行えます。
プラグインには、セキュリティ対策の実装や、サイトに入力フォームを設置できるものまで多数用意されています。これらを利用することで、使いやすいサイトを作成できます。
管理が容易
WordPressはサイトの作成・編集だけでなく公開や削除も簡単です。例えば一時的にコンテンツを非公開にしたい場合や、差し替え、削除なども直感的な操作で行えます。
このようなサイトの管理を専門知識がない人でも実施できるのは大きなメリットです。
社内ポータルサイトをWordPressで作成する手順
サイトの目的を定義する
最初に、社内ポータルサイトを作成する目的およびゴールを決めます。例えば業務効率の改善や、社内の情報共有・一元化などが挙げられます。このとき、できるだけ具体的に決めておき、社内ポータルサイトを作成後にきちんとそれらが改善できているか、定量的に確認して達成度が判断できるとなおよいです。
目的が明確になれば、必要な機能や管理対象ドキュメントも自ずと決まります。逆に目的が決まってないと、作成したのはいいものの、誰からも使われないという状況になりかねません。
あわせて、社内ポータルサイトの構築担当者および管理責任者を決めます。管理者がいないと、共有した情報が更新されず形骸化し、最終的に誰もサイトを利用しなくなる状況になってしまいます。
要件を明確にする
社内ポータルサイトの目的に沿って、作成するコンテンツの内容や機能要件を決めていきます。また、サイトのアクセス制限、権限管理の方法などセキュリティ要件、運用要件もあわせて決めます。
構築だけでなく管理方針も具体的に決めておくことで、その後の構築・運用もスムーズに進められます。
WordPressを使って実際に構築する
サイトを構築するには、サーバーの構築やドメインの取得が必要です。サーバーはレンタルサーバーを利用すれば月額費用で安く導入できます。すでに自社公式ホームページ等を運用している場合は、そのサーバーを利用するのもよいでしょう。
使用するサーバーが決まったら、WordPressをインストールし、プラグインやテーマなど必要な機能を追加していきます。ここまで準備が整ったら、定義した要件通りのコンテンツを追加していき、ポータルサイトを構築します。
運用、保守を行う
社内ポータルサイトの作成が完了したら、実際につかって運用を開始します。このとき、利用した人から意見をもらうための窓口を用意しておくと、その後の改善に役立ちます。
特に大きな問題が発生しなくなったら、管理者は運用を続けながら、WordPressやプラグインのアップデートを実施し、セキュリティ対策や機能改善を継続します。
社内ポータルサイトをWordPressで作成する際の注意点
使いやすさを重視する
社内ポータルサイトを構築したものの、使われなくては意味がありません。使われなくなる原因としては、必要な機能が不足している、使いにくい、といった点があります。
社内には若い人や年配の人、ITに詳しい人からそうでない人までいろんな人がいます。しかし、誰でも使いやすいサイトにしなければ、社内ポータルサイトは機能しません。
デザインというと見栄えを重視しがちですが、社内ポータルサイトでは見栄えよりも使い勝手を重視しましょう。利用事例が多いテーマを採用すると、比較的使い勝手のよいサイトが作成でき、おすすめです。
サイトをインデックスしない
GoogleやYahoo !などの検索エンジンがサイトをインデックスしてしまうと、検索時に社内ポータルサイトが表示されてしまいます。そうなると外部の人に対しても社内ポータルサイトが見えてしまいます。
そうならないようにするため、社内ポータルサイトは検索エンジンにインデックスされないように設定しておく必要があります。WordPressではデフォルトの機能で「検索エンジンがサイトをインデックスしないようにする」という設定ができるようになっています 。検索エンジンに登録しない場合は、必ずこの設定をいれておきましょう。
セキュリティ対策を行う
社内ポータルサイトが誰でもアクセスできると情報漏洩になります。通常、社内向けのネットワーク上に 社内ポータルサイトを設置しますが、現在のようにテレワークを実施している企業では、外部ネットワークに社内ポータルサイトを設置する場合があります。その際は外部の人が社内ポータルサイトに簡単にアクセスできないように十分なセキュリティ対策を行うことが大切です。
例えば、社内ポータルサイトにはアクセス制限やパスワード認証、Basic認証、画像認証などの認証機能を使用し、外部の人が簡単に情報を参照できないようにしておきます。
他にも、ソフトウェアのセキュリティを高めるため、WordPressおよびプラグインのアップデートを定期的に実施しましょう。
サイトの管理者を立てる
社内ポータルサイトの管理者を必ず決めておきましょう。管理者が不在だと、情報が更新されず必要な情報が共有されません。また、情報を更新したくても誰に依頼すればいいか分からない状態になります。
社内ポータルサイトを効果的に活用するためには、管理者を立てることを忘れないようにしてください。
社内ポータルサイト向けのWordPressテーマ
ルクセリタス
ルクセリタスは「高速」「多機能」「SEO」「レスポンシブ」を重視した、無料で利用できるWordPressテーマです。管理画面では600項目以上でカスタマイズが可能です。「表示が速く細かいカスタマイズができる」という点で社内ポータルサイトにおすすめです。
公式サイトにはカスタマイズの方法も掲載されているため、テーマを利用する際はあわせて参照しておくとよいでしょう。
公式サイト:https://thk.kanzae.net/wp/
WIING STAFF’S
WIING STAFF’Sは、軽量・シンプルを重視したWordPressテーマです。必要最低限のファイル構成となっており、高速な表示を実現しています。「できるかぎり高速に表示したい」という場合に、おすすめのテーマです。
公式サイト:https://wiing-wsc.com/wiing-staffs/
Cocoon
Cocoonはシンプルなデザインかつ多機能な無料WordPressテーマです。レスポンシブデザインにも対応しており、PCで見てもモバイル端末で見ても自動的に最適化して適切なサイズで表示されます。サービスサイトやアフィリエイト サイトなど多くのサイトでの利用実績があり、使い勝手のよさがおすすめポイントです。
公式サイト:https://wp-cocoon.com/
社内ポータルサイトはWordPressで作成しよう
本記事では、社内ポータルサイトをWordPressで構築するメリットや手順、おすすめのテーマについて紹介しました。WordPressはプログラミングの知識がない人でもプラグインやテーマを利用することで簡単にポータルサイトを作成できるだけでなく、管理も簡単です。社内ポータルサイトを作成する際は、WordPressの利用がおすすめです。
ただし、WordPressで作成したからといって、社内ポータルサイトが多くの人に使われるかどうかは別問題です。そのため、WordPressでポータルサイトを作る際も、利用者にとって使いやすいサイトにする、セキュリティ対策を講じる、専任の管理者を明確にする、といった点はしっかり押さえましょう。