業務効率の改善を考える際、情報共有の迅速化を重要視する企業は多いでしょう。素早い情報共有の実現手段の1つが、社内ポータルサイトの構築です。社内ポータルサイトがあれば、必要な情報へ誰でも素早く辿り着けます。
この記事では、社内ポータルサイトについて詳しく解説します。活用方法や導入メリット、運用を成功させるポイントを紹介しますので、ぜひご覧ください。
社内ポータルサイトとは? 他の情報共有ツールとの違い
社内ポータルサイトとは、企業内のさまざまな情報にアクセスするための入口となるサイトです。社員のみ利用するため、一般公開はされません。「社内イントラサイト」とも言います。
具体的には、社内報やスケジュールの掲示、資料の保管、社内FAQページなど、数多くの情報を管理・活用するために制作します。業務上必要な情報をサイト上に集約することで、社員は知りたい情報へのスムーズなアクセスが可能です。
なお、単に「ポータルサイト」と言う場合、多様なコンテンツへの玄関口となるWebサイトを指します。たとえば、GoogleやYahoo!といった検索エンジンも、ポータルサイトの一種です。
社内ポータルサイトのほか、企業が用いる情報共有ツールにはさまざまな種類があります。混同しないよう、社内ポータルサイトと役割が似ている3つのツールとの違いを見てみましょう。
1.グループウェア
グループウェアとは、組織のコミュニケーションや情報共有に用いる総合的なツールです。スケジュール・プロジェクト・タスク管理、メール、チャット、ファイル共有、ワークフローといった数多くの機能を包括しています。
2.ビジネスチャットツール・社内SNS
ビジネスチャットツールと社内SNSは、コミュニケーション機能に特化したツールです。リアルタイムな情報共有のほか、社内コミュニケーションの活性化にも繋がります。メッセージの送受信に加え、ファイル共有やビデオ通話などの機能もあるサービスが一般的です。
3.社内掲示板
社内掲示板とは、会社内で利用する電子掲示板です。話題ごとにスレッドを分けられるため、業務報告などの大人数向けの情報告知に適しています。近年は独立したツールではなく、社内ポータルサイトを含む他の情報共有ツールの一機能として含まれているケースが多いです。
社内ポータルサイトの活用方法と主な機能
ひと口に社内ポータルサイトと言っても、活用方法は会社ごとに異なります。よくある社内ポータルサイトの活用方法には、以下4つの例が挙げられます。
- 1.社内Wikiの作成
- 2.社内報やスケジュールの掲
- 3.オンラインストレージ
- 4.社員ごとの情報管理
それぞれ、主な機能と合わせて説明します。
1.社内Wikiの作成
1つ目の活用方法は、記事作成機能を使った社内Wikiです。社内規定やガイドライン、業務マニュアル、FAQページなど、社員が自由に閲覧できるページを制作します。一度制作したページは編集できるので、情報変更に合わせて内容のアップデートが可能です。
多くの社内ポータルサイトは、テキストのほか動画や画像、PDF、Wordなどの各種ファイルのアップロードに対応しています。また、検索機能が実装されており、社員は知りたいページへスムーズにたどり着けます。
2.社内報やスケジュールの掲載
社内ポータルサイトは、社内報の掲載場所としても活用できます。たとえば、掲示板機能を使うと、社内全体に周知したい「お知らせ」を簡単に共有できるでしょう。記事形式の場合は、メール配信機能などで社員に新着記事の公開を通知し、情報伝達の抜け漏れを防げます。
カレンダー形式のスケジュール管理機能は、社内行事やプロジェクト、休暇などの全社に共有すべき情報の伝達にも役立ちます。社内ポータルサイトでスケジュールを一括周知できるため、複数の部門や部署が関わるプロジェクトであっても、業務の日程調整を円滑に行えるでしょう。
3.オンラインストレージ
社内ポータルサイトは、オンラインストレージとしての使用も可能です。サイト上に各種ファイルをアップロードしておくことで、必要な資料をすぐにダウンロードできます。
ファイル共有はチャットやメールでも可能ですが、大容量データの送受信には向いていません。サイト上にあらかじめ保存しておけば、保存ページのURLを伝えるだけで簡単にデータを共有できます。また、使用頻度の高いフォーマットも保管・整理しておくと、「請求書のテンプレートはどこだっけ?」と探す手間もなくなるでしょう。
4.社員ごとの情報管理
社内ポータルサイトの中には、社員ごとの管理機能を持つサービスもあります。ブックマーク機能がある場合、ユーザーごとにお気に入りの記事を登録可能です。業務マニュアルなどのよく見るページへすぐにアクセスできるため、一から情報を探す手間を省けます。
その他によくあるのが、閲覧履歴、チャット機能、個人のタスク管理、ワークフロー申請、勤怠管理といった機能です。ページの閲覧や投稿だけでなく、社員ごとの管理機能を活用すれば多くの業務を社内ポータルサイト上に集約できます。
社内ポータルサイトの導入効果は? 5つのメリット
社内ポータルサイトを導入すると、どのような効果を期待できるのでしょうか。具体的な導入メリットは、次の5つです。
- 1.業務効率と生産性の向上
- 2.確実な情報伝達
- 3.サイロ化の抑制
- 4.新入社員の教育
- 5.ペーパーレス化の実現
順番に確認しましょう。
1.業務効率と生産性の向上
社内ポータルサイトがあると、業務効率と生産性の向上が見込めるでしょう。たとえば、業務のガイドラインやFAQをまとめておくことで、社員は知りたい情報を自分で調べられます。誰かに質問するために席を立ったりメールを送信したりといった、業務の無駄をなくせるでしょう。
社員1人ひとりの業務効率が改善されることで、会社のコア業務へと割り当てられる時間が増えます。新商品の企画・開発や顧客との商談など、会社の利益を生む活動に多くの業務時間を使えれば、会社全体の生産性向上に繋がるでしょう。
2.確実な情報伝達
社内ポータルサイトを社内報の告知場所として活用すると、社内全体に告知したい情報の周知徹底が可能になります。会社の規模が大きいほど、情報伝達にミスが起きがちです。そこで社内ポータルサイトで情報を発信すれば、全社員へスムーズに必要事項を伝えられるでしょう。
さらに、メールやSMSによる通知機能を使うと、社内ポータルサイトを閲覧する習慣がない社員にも確実に情報伝達できます。テレワークを実施する場合でも、社内ポータルサイトを通じた素早い情報共有が可能です。
3.サイロ化の抑制
社内ポータルサイトは、サイロ化の抑制にもなります。ビジネスにおけるサイロ化とは、業務プロセスや情報が部門ごとに孤立している状態です。サイロ化が起きると他の部門と上手く連携できず、本来なら不要であるはずのコストや手間が生じてしまいます。
一般的にサイロ化は、コミュニケーションや情報共有が不足している企業に起きやすいと言われています。社内ポータルサイトは、企業内のさまざまな情報をサイト上で一元管理する仕組みです。各部門が保有するデータへの玄関口となり、容易に情報を共有できます。部門間の孤立を防ぐことで、業務上のサイロ化も起きづらくなるわけです。
4.新入社員の教育
新入社員の教育にも効果的なのが、社内ポータルサイトを使った社内Wikiの作成です。多くの企業は新人研修を実施するものですが、社内Wikiも用意しておけば、新入社員は自らわからない箇所を学べます。ガイドラインやFAQを参照し、教わった内容を振り返ったり、マイページにブックマークしたりしてスムーズに業務を理解できるでしょう。
また、社員であれば誰でもページを閲覧できるため、ノウハウが継承しやすく業務の属人化を防ぎやすくなります。突然の退職や移動があっても、新たな担当者へ円滑に業務を引き継げるでしょう。
5.ペーパーレス化の実現
社内ポータルサイトによる情報共有が標準化されれば、ペーパーレス化を実現できます。社内報や業務資料を紙に印刷する必要がなくなり、用紙やインク代などの大幅な費用削減が可能です。ペーパーレス化を機に承認ワークフローもオンラインに移行すれば、上司の押印を求めて社内を回る時間もなくなるでしょう。
さらに、紙の場合はキャビネットなどの保管場所も確保しなくてはいけません。書類の紛失・盗難といった、セキュリティ上のリスクも高いでしょう。できる限り紙の資料をなくすことで、印刷の手間だけでなく管理やセキュリティ上の負担も減らせるわけです。
社内ポータルサイトの制作方法
社内ポータルサイトは、業務効率化やサイロ化の予防といった多くの導入効果を期待できます。そもそも、社内ポータルサイトはどのように作るのでしょうか。社内ポータルサイトの制作方法は、主に以下の3つです。
- 1.無料ツール
- 2.パッケージサービス
- 3.スクラッチ開発
制作方法ごとの特徴を紹介します。
1.無料ツール
社内ポータルサイトの構築コストを抑えられるのは、無料ツールを使う方法です。具体的には、WordPressなどのCMSやGoogleサイトによって作成します。無料で作れる分、実装できる機能は多くありません。とはいえ、小規模な会社であれば、無料ツールで十分なケースもあります。自社の従業員が少ない場合は、有料サービスに問い合わせる前に無料ツールで運用可能かを検討してみましょう。
2.パッケージサービス
社内ポータルサイトのパッケージサービスを利用する方法もあります。基本機能がすでに実装されており、要望に合わせて機能やデザインをカスタマイズする方法です。利用料金がかかりますが、自社の管理・運用負担が少なくコストパフォーマンスが良い制作方法と言えます。後述のスクラッチ開発も含め、基本的にはパッケージサービスによる構築がもっともおすすめです。
3.スクラッチ開発
スクラッチ開発は、外部に依頼、もしくは自社で独自の社内ポータルサイトをゼロから作り上げます。3つの制作方法の中で、一番難しい作り方です。導入・運用コストももっとも高額になる一方、柔軟にシステムを構築できます。自社ならではのオリジナル機能が必要な場合、検討すると良いでしょう。ただし、社内ポータルサイトは複雑な操作を要するシステムではないため、本当に取り組むべきか慎重に考えてみてください。
▼社内ポータルサイトの詳しい作成方法や手順は、こちらの記事をご覧ください。
社員が使いづらい社内ポータルサイトの特徴
制作した社内ポータルサイトは、社員が使ってくれなければ意味がありません。しかし、社内ポータルサイトが活用されず、運用に失敗してしまう事例も存在します。社員が使いづらい社内ポータルサイトの4つの特徴を把握し、失敗を回避しましょう。
- 1.情報を見つけづらい
- 2.投稿方法がわからない
- 3.情報が古い・更新頻度が少ない
- 4.使い方が難しい・手間がかかる
1つずつ、特徴を詳しく解説します。
1.情報を見つけづらい
情報を見つけづらい社内ポータルサイトは、社員に使われなくなります。どこに何の情報があるのかわからなかったり、検索性が悪かったりすると、社員は参照したい情報にすぐに辿り着けません。欲しい情報をすぐに参照できない場合、サイト内をさまよう時間が長引いてしまいます。他の社員に質問したほうが早いため、次第に社内ポータルサイトを見なくなってしまうでしょう。
2.投稿方法がわからない
新しいページの投稿方法がわかりづらいと、社員の利用ハードルが高くなります。せっかくマニュアルや資料を制作する意欲があっても、投稿方法が不明では使いようがありません。また、そもそも「何を投稿すれば良いのか」すらわからない社内ポータルサイトもあるでしょう。どのような情報を発信して良いのかが周知されていないと、社員は情報共有をためらってしまいます。
3.情報が古い・更新頻度が少ない
社内ポータルサイト内の情報が古いと、情報の信頼性が低下します。たとえば、最終更新日が数年前の業務ガイドラインを見ても「本当にこの内容で仕事を進めて良いのか」と不安に思う人は少なくないでしょう。信頼性が低い情報は参考にならず、閲覧する意味がありません。投稿頻度が著しく低いサイトは、新たに投稿するハードルも上がります。結果的にいつまでも情報が更新されない悪循環を招き、誰もサイトを利用してくれなくなるわけです。
4.使い方が難しい・手間がかかる
社内ポータルサイトの使い方自体が難しいと、社員が使いこなせません。たとえば、新規投稿のたびにマニュアルを参照しないと操作方法がわからないサイトは、社員の利用が遠のくでしょう。わかりにくい導線設計や見づらいデザインも同様です。また、社内ポータルサイトにアクセスする都度、複雑なユーザー認証を求める仕様は面倒かもしれません。セキュリティ上アクセス制限を設けたい場合、可能な範囲でシンプルなシステムを採用したほうが良いでしょう。
社内ポータルサイト運用を成功させるには?
社員に活発に使ってもらえることが、社内ポータルサイト運用の成功と言えます。どのようなサイトであれば、社員は活用してくれるのでしょうか。前章の使いづらいサイトの特徴を踏まえ、5つのポイントを紹介します。
- 1.社内ポータルサイトを複数作らない
- 2.テンプレートを用意する
- 3.最新情報を保つ
- 4.使いやすいUIやデザインにする
- 5.セキュリティ対策も行う
重要なポイントを解説しますので、参考にしてみてください。
1.社内ポータルサイトを複数作らない
原則として、社内ポータルサイトをいくつも作るのはやめましょう。社内ポータルサイトが複数あると、社員はどこに欲しい情報があるのかわかりません。扱う情報量が多いからといって、部門や部署ごとにサイトを分けてしまうとサイロ化の一因にもなります。
社内ポータルサイトは1つにまとめて、ページの階層や目次を作ってカテゴリを整理しましょう。情報を探しやすくするため、サイト内の横断検索機能も実装すると利便性が高まります。
2.テンプレートを用意する
「投稿したくても投稿方法がわからない」といった事態を防ぐため、投稿用テンプレートの作成は必須です。「社内報」「行事日程」「稟議書」「業務ガイドライン」「FAQページ」など、投稿内容の種類ごとにテンプレートを作るとわかりやすいでしょう。
テンプレートがあれば、そもそも何を投稿すれば良いのかわからないと悩む社員へのサンプルにもなります。また、作成したテンプレートは、投稿画面から簡単に選択・反映できると便利です。こうしたテンプレート機能を実装できない場合は、各種テンプレートをまとめたページを作ると良いでしょう。
3.最新情報を保つ
社内ポータルサイトが扱う情報の信頼性を高めるには、コンテンツを最新情報に保つことが重要です。頻繁に更新してもらうには、テンプレートの用意やサイトの使いやすさが大切になります。ただし、社員の自主性だけに任せるのはおすすめできません。社員の厚意に丸投げしてしまうと、一部スタッフのみに負担が偏る恐れがあるからです。
適切に最新情報を保つには、社内ポータルサイトの運用責任者を決めるのをおすすめします。社内ポータルサイトの情報整理をきちんと仕事として扱い、業務フローを構築して取り組んでもらうことが重要です。
4.使いやすいUIやデザインにする
社内ポータルサイトは、直感的に操作できるようなUIとデザインが大事になります。不要な機能が多いと、PC操作が苦手な従業員は新規ページの投稿に戸惑うかもしれません。不要な機能や過剰な装飾は避け、わかりやすいデザインを目指してみてください。
セキュリティ上問題ない場合は、複雑すぎるアクセス認証も避けましょう。アクセス方法が面倒だと、利用が定着しづらくなります。たとえば、シングルサインオンを採用してGoogleアカウントでログインできるようにすると、比較的スムーズにアクセスできるでしょう。
5.セキュリティ対策も行う
社員の使い勝手とは別の観点ですが、社内ポータルサイトのセキュリティ対策も欠かせません。社内ポータルサイトは、企業内の情報への入口となります。情報漏洩のリスクがゼロではないため、指定IPアドレスのみのアクセス許可や閲覧範囲の権限設定といった対策を行いましょう。
社内ポータルサイトで情報を一元管理して円滑な業務を実現しよう
社内ポータルサイトは、情報の一元管理に役立つツールです。組織内の各データへの入口となり、素早い情報共有による業務効率化が見込めます。
一方で、使い勝手の悪い社内ポータルサイトは社員利用が定着せず、形骸化してしまうかもしれません。投稿用テンプレートの準備や使いやすいサイトデザインの構築など、社員に活用されるサイト作りが大切です。社内ポータルサイトの利用が定着すれば、円滑な業務を実現できるでしょう。